集英社のチャットノベルアプリ「TanZak(タンザク)」が成功しないと思う理由について
2019年6月20日、集英社はチャットノベルアプリ「TanZak(タンザク)」を配信開始しました。
TanZakは、Lineのようなチャットツール形式で物語を配信します。
スマホに最適化されており、横書きのテキストをタップすると続きが表示されます。
手軽に1行目を読めるように、全作品を1話数分程度で読める文字数(約1200~2000字程度)にしています。
会話風の形式で配信するため、キャラクター同士の会話を見ている感覚で物語を楽しむことができます。
配信作品について
配信作品は「JUMP j BOOKS」「集英社コバルト文庫」「集英社オレンジ文庫」「スーパーダッシュ文庫」「ダッシュエックス文庫」のベストセラーを中心に、40作品・総話数1000話以上からスタートするとのことです。
当面は読者投稿は考えておらず、編集部で厳選したプロの作品のみを掲載するとのことです。
冒頭部分を無料配信、続きはコイン消費
アプリ内通貨の「コイン」を購入して、1話ずつ読む形式となります。
全ての作品の冒頭部分を無料配信して、続きを読むには1話あたり10コインを消費するというもの。
無料コインが30枚以下になると40分ごとに1枚回復する仕組みであり、30コイン(3話分)は24時間で復活します。
また、一度読んだ話は72時間まで読み返せます。
マネタイズについて
アプリ単独でマネタイズを完結する必要はなく、アプリをきっかけに小説を購入してもらうケースや、
人気の小説を漫画化するという展開も想定しているとのことです。
多様な取り組みができるのは出版社の強みとなります。
なぜTanZakが生まれたのか?
私が在籍するデジタル事業部は、漫画や小説をデジタル化する部署ですが、漫画と小説のデジタル化はまったく別物です。たとえばキャンペーンの観点で見ますと、漫画は試し読みや1巻無料が多いですが、小説の場合は50%オフやまとめ買い価格といった値引きが中心です。
漫画のデジタル化は“試し読み文化”を背景に市場が発展しましたが、小説は試し読みから購入に至るシナリオが構築されませんでした。もちろんアプリの問題やビューアーの選択肢が少ないといった課題はありつつも、前述のような戦略しか用意されていません。そのため、後ほどお話ししますが、TanZakは”1話目を読む”ハードルを低くしました。
あと、デジタルの小説では偶然の出会いが生まれにくいんですね。紙の雑誌や単行本の漫画作品が、デジタル化することで日の目を見た例は少なくありません。一方で、小説のデジタル化は試し読みする機会がないため、再ヒットするケースは多くないのです。
https://japan.cnet.com/article/35138615/
繰り返しになりますが、小説をデジタル化することで期待しているのは“読書習慣の獲得”です。以前、小説を読まない理由を周りにヒアリングしたところ、「1冊を読み切れない」「(前の小説を)読了していないため本の購入をためらう」という方々がいました。他方で出版業界関係者に同じ質問をすると、「すべて読まない」「途中から読む」「並行して複数の本を読む」といった回答を得られました。
また、弊社の各種漫画アプリの利用動向を調査したところ、ユーザーは複数の漫画を読みかじっていたんです。アプリによって漫画を読む習慣を作ることができたということです。TanZakによって小説でも同じことを起こせないかと期待しています。
https://japan.cnet.com/article/35138615/2/
TanZakの狙いは「読書習慣の獲得」です。
小説の試し読み文化を浸透させて、デジタル漫画で起きたような再ヒットを小説においても狙うようです。
果たして流行るのか?
TanZakの狙いは非常に面白いとは思いますが、なかなかに難しいと思います。
というのも似たようなサービスは既にリリースしていて苦戦しています。
ストリエは2015年11月に正式にサービスが開始されました。
チャットアプリのように「読める」「投稿できる」サービスとなります。
作品は読者投稿がメインとなりますが、一迅社文庫、MF文庫J、講談社ラノベ文庫、JUMP J BOOKSなどから有名作品の試し読みもできます。
会話のように読める形式や、有名作品の試し読みなど、TanZakと同じようなサービスのストリエですが、
現在は運営が譲渡されて何とかサービスは継続されているものの、いつサービスが終了してもおかしくない状況です。
というのも運営が譲渡される前には一度、サービス終了の告知を行っています。
そもそもチャット形式はノベルに向いているのか?
スマホに合わせるためにチャット形式にしていますが、
ノベルというものはキャラクター同士の会話だけで進むわけではなく、会話以外の例えば場面の描写などもあります。
場面描写などはチャット形式には向いておらず、そもそもノベルをチャット形式にすることが向いていない可能性があります。
果たしてTanZakが成功するかはわかりませんが、今後も動向は注視していきたいと思います。
本ページはプロモーションが含まれています。